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第21部分(第3/5 頁)

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を引きはがして、顔を覗きこんだ。まっすぐ歩を見つめている健人の目を見て、笑みを向ける。大嫌いだったこのまっすぐな目も、今は嫌いではない。嫌いや好きと言う感情は、曖昧で変化しやすい。けれども、今は、自信を持って言える。

「好きだよ、健人のこと」

三度目の好きは、戀だった。

好きと言う言葉は魔法みたいで、ウソのようにも聞こえた。唇が觸れそうになる寸前で、健人は歩の體を押した。忘れられないあの光景が、頭の中によぎった。

「……お前さ、彼女、いんだろ。だから、こんなことすんな」

唇が震えて、上手く言葉が出せなかった。それを聞いた歩はきょとんとした顔で健人を見つめてから、どうしてと首を傾げた。彼女がいるなんて話は、一切したこと無いし、好きだと言ったのにどうして彼女が出てくるのか分からなかった。

「だって、この前、公園で……」

公園でと言われて、歩は「……あぁ」と頷いた。まさか、あの時のことを、健人に見られているとは思わず、つい、苦笑してしまった。話があると女の子から呼び出され、ジンと擼Г智挨蘊gませてしまおうと思って公園で話を聞いた。告白されるんだろうなと思っていたが、まさにそのとおりだった。

「あれ、別に彼女じゃないよ」

「だ、だって、お前! き、キスして……」

「ないよ。されそうにはなったけど」

はっきりと否定されて、健人はその情景を思い出した。二人の距離が縮まって、顔と顔が觸れそうになったところで目を逸らしたのだ。そのまま、逃げるように家へと戻り、ジンから電話がかかってきた。ちゃんと考えれば、キスした事実は見ていない。それが急に恥ずかしくなり、健人は歩むから離れてソファ��斡紺盲長丐紉苿嬰筏俊�

「俺は、健人が好きだから、誰かとキスしたりなんてしないよ」

まっすぐ健人を見つめている目は、ウソなど無い。それが伝わってきて、健人は目を逸らしてしまった。嫌われていると思っていて、彼女が居ると思い込んでいて、優しくしてくれているのは同情だと決め付けて、この感情は好きだけれど戀ではない、報われないと諦めていた。しかし、実際、歩は健人のことを好きだと言っている。嬉しいのか、それとも困っているのか分からない。ドキドキと、心臓が高鳴っているのは確かだった。

「……健人」

歩の手が伸びてきて、健人の腕を摑む。

「俺のこと、好き?」

ここでうんと答えれば、歩はどんな表情をするだろうか。そんなことを考えながらも、たった二文字は言えずに居た。口の中に溜まった唾液を飲み込んで、歩を見つめる。

「き……、らいじゃ、ない……」

苦し紛れに答えた健人を見て、歩は摑んでいる腕を引っ張った。「うん」なんて簡単に言えるのに、答えれたのは「嫌いじゃない」となんとも曖昧な返事だった。それでも気持ちは歩に通じたようで、強く體を抱きしめられる。それは雨の日に抱きしめられたときと同じようで、高鳴っていた心臓も落ち著きを取り戻している。健人はゆっくりと息を吐き出して、歩の胸に顔を埋めた。

「健人はいつも、一人って言う顔をしてた。俺はもちろんだったけど、父さんや景子さんにも頼らないで一人で何でもかんでもやってた。最初は、ただ、意地を張ってるだけだって思ってたんだ。特待生でいるのも、意地だって。健人は家族の輪の中に入りたくないん

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